| 店の白慢の一品は、
「水槽で泳ぐ透き通った天然物100%のイカの活造り」
イカは時として大量の墨をはき、活魚のまま輸送するのが困難なため、都会では活造りを味わうことができにくい。
この本物の新鮮なイカのおいしさを全国の消費者に提供したい、その思いから山崎が開発したのが、生きたままのイカの長距離輸送を可能にする
「墨なし活きいか」
の技術だ。
山崎は二十数年、イカの管理の難しさに悩まされつづけてきた。
墨を吐いても生きてはいるが、長距離輸送や水槽での取り扱いや、管理に多大なエネルギーを用した。
イカは刺激やストレスを感じると墨を吐くが、広い海とは違い水槽の中では粘着質の墨がイカのエラに付着してしまい、窒息してしまう。
イカ墨はタコの墨の3倍もの油分を含み粘着性が強い。
ー匹の墨で水槽のイカが全滅することもある。
死んで透明感がなくなったイカは味も落ち、値段も大幅に下がってしまう。
”墨さえ吐かなければ…”
という考えから、最初は墨を吸引してみた。
しかし失敗。
それで墨を切ってしまえばいいと思った。
山崎は,生きたイカの内臓を傷つけずに墨袋のみを切り、墨を出してしまうことはできないだろうかと考え実行した。
「生きているものの内臓を切り取るということは、さすがにダメだろうなと少し諦めてもいたんです」
と山崎は言う。
しかし魚を扱う者にとって、生きた魚に傷をつけてはいけないことは常識。
自分のアイデアを成功させる100%の確信がなかった。
そんなとき、地元長崎の大学教授が偶然、店にやってきた。
墨抜き技術の悩みを話すと、水産学部の教授を紹介してくれ、共同開発として特許出願に至った。
それから山埼は寝る問も惜しんで研究に打ち逃んだ。
夕方からは店の営業が始まり、終わればもう深夜。
「大学の研究者からのアドバイスをもらったのだから問違いはない」
とは言うものの、日本全国でまだ実証されてなく(誰も行っていないからこそ特許価値があるのだが)試行錯誤を必死に続けた。
山崎はイカの体の奥にある墨袋までとどく、長い鋏をつくり、生きたイカで実験。
最初は内臓が傷ついて、すぐに死んでしまうイカが多かったが、何度も改良を重ね、ついに生かしたまま墨袋だけを切りさることができる特殊な鋏を完成させた。
先端の長さが違う特殊な鋏をイカの内部に差し入れて墨袋のみを切る。
作業にかかる時間は1分程度で、切ったあとは大量の海水で墨を洗い流す。
その後水槽に戻せば、そのままの状態で5〜10日間は活きる。
手術したイカは.五、六時間ほどで回復し、これまで最大10日間生きたという。
これにより、流通が海から離れるほど困難であった問題をみごと解決した。 |






  |